「薬王」孫思邈(そんしばく) 5.お屠蘇(とそ)

あけまして、おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
お屠蘇の風習は平安時代に中国から日本に伝来し、宮中の儀式となり、江戸時代になり一般にも広まり現在まで続くそうです。しかし現代の中国では、屠蘇の風習はすでにみられないそうです。屠蘇の原型となった処方は孫思邈以前の「神医」とよばれた華侘(かだ)によるとされますが、これをアレンジし広めたのが、孫思邈といわれています。「屠蘇」という名称は、孫思邈が晩年を過ごした隠居所の「屠蘇庵(とそあん)」に由来し「病魔を屠り(ほふり=打倒し)、健康を蘇(よみがえ)らせる」という意味が込められています。孫思邈は年末年始に屠蘇庵を訪れた知人、友人などに屠蘇散(とそさん)をプレゼントしていたそうです。なお当時の屠蘇散は冬のカゼ予防目的の処方だったようです。(つづく) 続きを読む 「薬王」孫思邈(そんしばく) 5.お屠蘇(とそ)

「薬王」孫思襞(そんしばく) 2.レディーファースト

孫思襞が2千年前に述べた「女性の病気治療は、男性の病気治療の10倍難しい、それは月経や妊娠・出産があるからだ」は、あたかも、現代の医学部で婦人科教授が婦人科学青い小花を学び始める医学生たちを前に基本を講義しているのと変わらないのです。彼の代表作、全30巻の医学大全集「千金要方」でも診療科別では「婦人科」からはじまるというレディーファーストぶりです。そもそも当時に女性の病気を別格に扱うこと自体がかなり先進的です。一方、近代の医学史に目を向けると、1990年初頭、レディーファーストの国アメリカで残念なスキャンダルが表沙汰になりアメリカ議会で物議を醸しました。女性国会議員の告発に始まり、アメリカ全土の女性団体が一斉に抗議に立ち上がりました。スキャンダルの内容は、当時、世界中が絶対的な信頼を置いていたアメリカが誇る国立衛生研究所の統計が実は「極秘に」女性のデータを過去40年間ほぼ切り捨てていたという、まさかの事実でした。例えば「心臓病の危険因子」の統計に使われた1万数千人のデータに女性がひとりも入っていなかったそうです。女性団体は、医学研究の専門家集団が「女性は子宮を持った男性」と考えている何よりの証拠、女性差別だと猛反発しました。2千年前、レントゲンも心電図も血液検査もホルモンの概念さえもない時代に孫思襞が記した未来の医学関係者への警鐘ともいえる「女性の病気治療は、男性の病気治療の10倍難しい、それは月経や妊娠・出産があるからだ」とは正にこのスキャンダルの根本原因だったのです。新しい検査法やデータが次々と出現した時代、男性と比較して月経周期の各ステージ、初潮以前、月経周期、妊娠、出産、閉経後と刻々と複雑に変化する女性のデータを統計上扱いかねたのは想像されますが長年にわたるデータ捏造は許されません。孫思襞が見たら嘆くことでしょう。(つづく)

コンピューターと漢方

  • 1982年に赴任した国立栃木病院でのボスは診療の傍ら、赤い花精力的に講演会やマスコミ等で漢方医学の啓蒙活動をしていた村田高明先生でした。初めての面談の際、村田先生は、こう語りました。「将来、医師が病院でコンピューターを使う時代がくる。カルテだってコンピューター化される。また、漢方も今は古い医療と認識されているが、将来、現代の医学と併用されるようになる。君は今すぐに、この二つの分野を勉強しはじめなさい。」
  • 20年も先輩の言葉に、コンピューターを前に現代医学と漢方医学を併用する未来の自分を想像してみましたが、当時としては、まったくSFの世界でした。
  • 長い年月が過ぎ、今度は南多摩病院の院長に就任した村田先生に迎えられました。数年後村田先生は別の病院に異動されましたが、長年村田先生の漢方外来に通院中の患者さんの一部は、ご希望で二つの病院を行き来し診療連携が続きました。
  • いま、電子カルテに向かい現代医療と漢方医療を行っているとき、本当に昔想像した未来の時代の中に自分はいる、あのとき学び始めていてよかったという感慨が頭をよぎります。現在、村田先生も複数の病院で漢方外来をおこなっています。

貧血、鉄剤シロップという選択

  • 女性は月経や妊娠に関連して、男性の20倍貧血になりや赤い花すいとも言われます。そのほとんどは「鉄欠乏性貧血」で、鉄剤で治療します。
  • 毎年、健康診断で貧血治療を指導されても鉄剤内服による吐き気のため貧血の治療をあきらめている方が意外と多いのが現実です。
  • 貧血は酸素の運搬役の赤血球が不足する状態です。全身に十分な酸素を供給するために、薄くなった血液を循環させようと心臓はスピードを上げて対応する結果、長期には心臓肥大などで心臓を痛めてしまいます。また、貧血に慣れていると普段何とも感じませんが大きな病気や大ケガの際、回復が悪かったり、普通なら輸血が不要な状態でも、輸血が必要になったり、うつ状態になったりします。
  • そこで、おすすめするのは、「小児用の鉄剤シロップ」です。分娩までに確実に貧血を治したい多数の妊婦さんに処方してきましたが、吐き気のため内服を中止した方をみたことがありません。もちろん、妊婦さんでなくても内服できます。また増血効果も十分です。

隠れた貧血とフェリチン

配糖体(ハイトウタイ)は自然からの贈り物

  • マツバボタン漢方薬の多くは配糖体とよぶ一群の化合物を各種含んでおり、これらが薬効の源になっていることが多いのです。配糖体は「糖」と「非糖成分(糖以外の成分)」が強く結合したもので、各種の薬効成分は非糖成分中に存在します。
  • ところが糖が結合したままでは、通常、非糖成分を人間は吸収して利用することができませんし、人間の消化液もこの結合は切り離せません。そのかわり、大腸に住むごく一部の菌が糖の部分を切り離して非糖成分を裸の状態にしてくれるおかげで、人間は非糖成分を吸収でき、その薬効の恩恵を受けられるようになります。この菌たちを資化菌(シカキン)といい、配糖体ごとに特定の菌が資化菌として活躍します。
  • 植物が作り出す各種の配糖体と大腸内に自然発生する資化菌のコンビは人間にとって、自然からの贈り物といえます。
  • 初めて飲む漢方薬の場合、最初の数日間、便が緩んで、またもとに戻ることがあります。これは普段は少数派の資化菌が切り離した糖を栄養源にして増殖し大腸内の各種の菌の勢力バランスが一時的に変化するためと考えられています。

見える当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)効果