孫思襞(そんしばく)は2千年前の薬学者で医者。没後「薬王」とよばれました。存命中から中国では高名でしたが、現代では「欧米の医学関係者」たちの間で、医学史上のお気に入り人物のトップクラスだそうです。私も大ファンのひとりですが、その理由は彼の業績と真摯な生き様が現代の医療関係者からみても「お見事!」と感嘆してしまう点です。彼は虚弱児童でしたが7歳で学問に目覚め古今東西のあらゆる分野の書物や各地の古い言い伝えを精力的に研究し18歳の時「貧しい村人の病気を治す」と誓いをたて医学の道を歩み出し、20歳から村人の診療を実行、平行して新しい治療薬や治療法を次々に開発し続けました。また、地位や名誉を嫌ったエピソードも有名です。当時の皇帝が、(きっと専属の主治医になってほしくて)高い地位を与えると宮殿に再三招いても、いろいろ言い訳を繰り返しては招喚に応ぜず、ついには仮病まで使い逃げ切ったそうです。その後も、爵位(国家認定の貴族の地位)を与える話も持ち上がったが、やはり彼は丁重に辞退したそうです。それは軽薄な反骨精神などではなく、地位や名誉に縛られて彼のライフワークが妨げられるのを何より恐れたのでしょう。数々の業績はもちろん、このようなエピソードも現代の医療関係者の心をくすぐるのかもしれません。(つづく)